エンジニアコラム

矢島 芳昭 矢島 芳昭

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計測トラブルバスターY氏の事件簿

2017.03.13

計測トラブルバスターY氏の事件簿(1)

Mission1:通信エラーの原因を追え!

現場は魔物の巣(失礼)だった

そこには、長〜いUSBケーブルと、それに沿うように引き回された長〜い高圧出力ケーブルを繋いだ耐電圧試験器がありました。
とっさに「これは被試験物が絶縁破壊した時にノイズが出るだろうな」と思いましたので、USBケーブルと高圧ケーブルを離し、USBケーブルにEMIコア(ノイズフィルタ)を取り付けてみました。少しはましになったのですが、完全解決とはいきません。
ノイズを受ける側(USBケーブル)の対策だけではなんともならないようです。
困りました。このままではお客様がせっかくの「魔法の杖」を思うように使えません。

ノイズは発生源から断つ!

調べていくと、製品の取扱説明書に対策のヒントがありました。

ノイズ影響の軽減
出力間が短絡されたり、被試験物の絶縁破壊によってノイズが発生します。その影響で、周辺の電子機器などが誤作動する場合があります。ノイズの影響を低減させるために、高電圧側テストリードの先端と被試験物の間、および低電圧側テストリードの先端と被試験物の間(できるだけ被試験物に近い位置)に、トロイダルコア、または470Ω程度の抵抗を接続してください。

試しに耐電圧試験器の出力ケーブルをUSBケーブルに近づけた状態で出力を短絡すると、通信エラーが発生し制御プログラムは停止してしまいましたが、高圧ケーブルの途中に抵抗を挿入した状態で短絡すると、あら不思議。エラーはほぼ起きなくなりました。
取説はよく読むといいことが書いてあります。ぜひ通読しましょう。

なぜ抵抗を入れるとエラーが起きなくなるのか

耐電圧試験器は電源の一種ですので、高電圧の交流電圧源と見ることもできます。電源ですので、負荷に対して電流を流すことができます。TOSシリーズ(簡易型は除く)は定格として110mAまで流す能力を持っていますので、例えば10kΩの抵抗を接続して、1kVの設定にすればおおよそ100mA程度の電流が流せます。
この状態(全負荷)なら通信エラーは起きないのですが、問題は「もっと少ない電流しか流れていないのに通信エラーが発生するのはなぜなのか?」、「抵抗を1本入れただけでどうしてエラーが出なくなるのか?」について、考えてみましょう。

図1 部分放電が起こっている例

図1 部分放電が起こっている例

(図1)は交流電圧をある部材に印加した時に流れる電流を観測したものです。黄色が電圧波形なのですが、青い電流波形は細いヒゲのような波形になっています。これが今回の問題のヒントです。

放電時に流れる電流波形を観測すると、放電時に鋭いパルス状の電流が流れています(実際の観測は結構難しいです)。これらをフーリエ解析(FFT)してみると、商用周波よりもはるかに高い周波数成分を含んでいるのがわかります(数十MHzから数GHzに及ぶことがあります)。この波形で見ると、電圧波形の変動周期は20msで1周期になっていますが、電流の方ははるかに短い時間で1回の電流上昇・下降が起こっていることがわかります。
周波数は時間の逆数ですので、電圧・電流の周期から周波数を求めてみます。

  • 電圧の周波数=1/20(ms)=50(Hz)
  • 電流の周波数=1/0.1(μs)=10(MHz)
  • ※電流の時間は概算です。

こうしてみると、電圧に比べて電流の周波数成分は桁違いに高い周波数成分を持っていることがわかります。

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