エンジニアコラム

arakaki-shirou 新垣 史朗

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PCZ-SR_03

2017.08.28

難題の解決だけがソリューションか?

スマートラックシリーズの「伝わりにくい価値」とは

こんにちは。ソリューション開発部の新垣です。
本コラムでは、製品設計についての経験談などをお話できればと思っております。
あ、ちなみに名前の読みは「あらかき」です。女優さんの「ガッキー」さんとは字面は同じですが、わたしは濁りませんので。よろしくお願いいたします。

さて突然ですが、ここでみなさんにクイズです。
次にあげる商品には、ある共通点があります。それは何でしょうか?

カルピスウォーター
クックドゥー
リンスインシャンプー

説明するまでもありませんが、カルピスウォーターは飲料、クックドゥーは調味料、リンスインシャンプーは洗髪剤です。おそらくどれも、一度は口にしたことがある、使ったことがあるものでしょう。
「どれも何かを混ぜたものじゃない?」
ん〜惜しい。カルピスウォーターは「カルピスと水」、クックドゥーは「中華料理用の複数の調味料」、リンスインシャンプーは「シャンプーとリンス」です。でもそこではありません。

では答えです。いずれも消費(使用)者の「(最適な状態を実現する際の)手間を省いてくれる」ということです。

手間=作業=付加価値?

世の中の様々な場面において「手間だな、面倒くせ〜」があります。個人の生活場面はもちろん、会社の仕事の中にも「ゴロゴロ」あるはずです。「面倒なことをするのも含めて仕事だろ」という意見もありそうですが、ここでちょっと考えてみましょう。

例えば人が直接手を加える行為、身体的な施術や職人的な手工芸などは、時間を掛けること(プロセス)に価値がありそうです。こういった事柄があまりに「短時間」だと、ありがたみに欠けるように感じます。
一方、成果物(結果)がよければ良しという事柄は「費やす時間=価値」とは見なされにくいですね。とりわけ私たちの携わる工業製品はそれが顕著だなと感じます。これが農作物や食品といった「生もの」なら、生育時間や熟成・発酵期間などが必要と言われれば、「そうだよね」と理解されやすいかなと。
機械ものは基本的に「寝かせる時間」は必要ないはずなので(連続通電評価「エージング」というのはありますが)、「さっさと作ってよ」となります。

製造に携わる方なら重々お分かりかと思いますが、規格品の生産は時間勝負です。決められた作業手順をいかに正確に早くおこなうか。こういった状況においては、残念ながら「心をこめて丁寧に」といった心情的な要素は価値として見なされません。見た目やんちゃなお兄さんが口笛吹きながら、乱暴そうに作業していても、アウトプットが仕様通りになっていれば合格なんです。
とりわけ日本人には、作業の結果には、それを作った人の「誠意」とか「苦労」といった見えないものを感じたいという心情があるように思います。万物に神様がいる八百万(やおよろず)の神の国だからでしょうか。
しかし残念ながら、結果(品物)を受け取る側にそれが伝わるかどうかの保証はありません。なにか世知辛い感じもしますがそれが現実です。

日々の仕事の中で、明らかに手間で時間もかかるのだけれど、結果としてそれが製品価値に反映されないような事項があります。しかし手間だからといっていい加減にすることもできない。まさに「面倒」なことです。
冒頭にあげた、消費財3品は、それだけを見ると実にたわい無い様に思えます。「そんなもの自分で混ぜればいいじゃないか、混ぜただけで余計な金とるな」などと、くちさがない人もいるようです。しかしいずれも調べると「薄める、混ぜる」にも深いノウハウがあって「単に混ぜた」ということではないようです。これなどは「伝わりにくい価値」の典型ですね。

最適を手間なく実現できることも「ソリューション」

ここでようやく本題です。キクスイでは以前から、電源や計測器のラックアセンブル(ラックアップと配線)を特注としてお請けしていますが、近年はラックアップを仕様化し「スマートラック」と称した製品として提供する例が増えています(写真1)。
わたしは、そのスマートラックの一製品である「バイポーラ電源PBZ SRシリーズ」、「交流電子負荷PCZ-A SRシリーズ」を担当しましたが、これらも意地悪く言えば「ラックに入れて配線しただけじゃねーか」なんですね。

写真1 スマートラックの例

実際こういった作業をした方なら、わかっていただけるとは思うのですが、ラックに組み込んで一次側、二次側を配線し、一体物として正常に動作すること(=仕様)を保証するのは、実は簡単ではないのです。そこここに細かいノウハウがあって(でも熟練者であるほど、ノウハウとは思ってなかったりする・・・そこが皮肉)、ただ繋げただけでは思う様に動かないケースが多々あります。これも「伝わりにくい価値」だなと思います。

とりわけ「PCZ-A SRシリーズ」は、複数台を並列して単に大容量化しただけはなく、交流入力の相数・結線に応じて、負荷ユニットの組み合わせを自在に変えることができるシステムです。これは、お客様が自分でやってできない話ではないです。ただ非常に「面倒くさい」作業であることは間違いありません。時間が潤沢にあって手間も楽しいというのなら、スマートラックは「高い」とお感じになるでしょう。というか必要はないでしょう。

しかし、一般的にこの種の「段取り替え」は、短時間で済ませたいと考えるはずです。なぜならそれ(切替え作業)自身は価値を生まないからです。スマートラックの価値はまさにそこです。時間と作業の正確性を金で買う様なことですね(言い方いやらしいですけど)。これも立派な「ソリューション」ではないかと思っています。
ということで、以下にわたしが担当した「PCZ-A SRシリーズ」の開発経緯のお話をします。何を考え、何をした結果としてこの製品が出来上がったのか。仕様には記されていない「価値」がお伝えできればいいなと思います。多少手前味噌な感じもありますが・・・。開発ドキュメンタリーとして何かの参考になれば嬉しく思います。

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