エンジニアコラム

高橋 典夫 高橋 典夫

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マイスターは死せず

2017.09.04

マイスターは死せず

CCリップルはノイズで操る

こんにちは。デジタル全盛の世間を横目に、アナログ職人を極めたいと願う高橋です(笑)。今回は私が若かりし頃に「職人技」を見た!と思った出来事をお話ししたいと思います。

電流センシング線の謎

かれこれ30年以上昔の話になりますが、当時わたしは電源の製造担当をしており、ある日ふと疑問に思ったことがありました。
電圧のセンシングはシールド線を使っているのに、電流のセンシング線は、普通の単線を使用している。電流のセンシングは検出抵抗の数100mVという微小な電圧を検出しているため、むしろそっちの方に、外来ノイズの輻射を防ぐシールド線が必要なのでは、と不思議に思いました。

ところが、先輩曰くCCリップルは「調整する」とのこと。ノイズが入るのを抑えるのではなく、逆位相をかけて相殺して調整するのです。
高速道路で騒音防止のため、音を反射させて打ち消すという話を聞いたことがありますが、同じ原理です。最近の事例ならノイズキャンセリングイヤホンも同じ理屈ですね。
一般的には、ノイズ対策は、防ぐことと教わっていると思いますが、その発想の転換を聞いた時は感服したものです。そこに至るまでの、苦労には、計り知れないものがあったのでしょうが、フィルターなどの部品を使わない「合わせこみの職人技」にしびれました。

こういう時代だからこその「逆張り」で

一方、若き日の私はというと、センシングの線を引っ張りすぎて、切れてしまい、無制御の電流で出力ヒューズを飛ばしたり、検出抵抗のセンシング線を短くしすぎて、規格内に調整できないこともあるなど相変わらず「ひよっこ」のままでしたが・・・。でもそんな苦労を乗り越えて、将来は、立派なリップル職人になるつもりで頑張っていました。しかし世の中そんなに甘くはなかったようです。いまでも製品設計をするたび、古の人たちの苦労が身にしみることが少なくありません。

昨今は、部品も安くなり、性能も上がっている時代です。ものづくりも自動化されて、リップル調整などとんでもないとお叱りをいただくような時代です。でも、人と同じことをやっていては、同じ程度のものしか出来ないため、安いものに流れてしまう世の中です。
だらこそ逆に、人手でしか出来ない「匠の技」が光る可能性があるようにも感じます。

分野が違いますが、冶金(金属加工)に「へら絞り」という技術があります。円盤状に加工した金属板を回転機にセットして、へらを少しずつ、数回に分けて押し当てながら金属板を変形させる技術。ロケットや航空機の先端部分などはこれで作られているそうです。こういった技術は大手企業でもライン化は不可能と言われています。でもいつかは、AIやロボットが高度化すると可能になるのかもしれませんが、まだ時間がかかりそうです。こういった例を見ると未だにゾクゾクっときます。

時流はデジタル・自動化全盛ですが、だからこその「逆張り」。これぞ職人という技を、お見せできる機会を、今日も虎視眈々と狙う私なのです(笑)。

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