エンジニアコラム

高橋 典夫 高橋 典夫

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手作業が最強

2018.04.23

手作業が最強

効率性・合理性を求めた結果失ったこと

こんにちは。昭和のアナログ職人、高橋です(笑)。
さて、私も定年が近づいてきましたので、このコラムも最後になるかと思いますが、よろしくお願いいたします。

さて今回のお話は「束線(そくせん)」についてです。

束線のメリット

長いこと電源装置に携わってきて、これぞ職人技だなと思ったことのひとつに、配線をまとめる作業があります。この作業を「束線(そくせん)」といいます。電子機器内部に配置された電子部品や基板同士を繋げるには電線が必要です。それが数本なら、さして手間はありませんが、通常は数十本以上を網の目のようにあちこちに(正しく)繋げる必要があります。これを一本一本やっていたら、労力がかかることはもちろん、一定の品質を維持することが非常に困難です。そこでその解決法が束線という下作業なのです。

束線は、まずA1サイズぐらいの板に釘を打って、配線の長さや分岐点を示す路線図のようなものを作り、それを利用します。パチンコ台のような感じです。束線図という青焼きされた紙(複写機の普及前は建築図面等で使われていた青写真<ジアゾ式複写>が主流でした)を板に貼って、行先、出先、経由のポイントに釘を打ち、束線表に書かれた、線の種類と行先、経由、出先に従って線材を引き回します。

束線図に従って線材の引き回しが出来たら、次は結束です。蝋引きの糸を使って線材を束ねていくと、最初平面的に置かれていた線材の束が、結束していくに従い形を変えてやがて立体的になっていきます。なお蝋引きの糸は、燃えるといわれて、やがて蝋なしのタコ糸に変わっていきましたが、蝋があった方が、はるかに作業しやすく出来栄えもきれいでした。古の職人は経験から蝋引きが最善と考えたのでしょう。その点は、非常に残念に思った記憶があります。今はタコ糸も燃えるというので、難燃性のSKバインダーになっています。しかしSKバインダーだと出っ張りが出て、筐体にきれいに沿わせにくく、見た目もスマートではありません。蝋引きの糸のような新素材の登場を期待したいところです。

さて、束線のメリットは、引き回しの形が固定できるので、作業者によって品質が左右されにくいことだと思っています。また自分でやってみてよくわかりましたが、引き回しの仕方で寄生発振が無くなったり、ノイズが減ったりします。過去の先輩たちが残した仕事において、束線は単なるまとめ作業ではなく、時間をかけてベストな引き回しを選んでいたんだと感心しました。

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