エンジニアコラム

後藤 義則 後藤 義則

2 0

高速パルスを正しく観測する

2016.11.21

高速パルスを正しく観測する

「プローブの校正はオシロ操作の基本」という今更な話を検証してみた

 

1.波形が試験表の値と違う

私は、車載用機器の過渡サージ試験器などを主に担当しています。お客様から「今回、菊水の製品を導入したのですが、波形観測に1/100のプローブが必要と言われたので合わせて購入しました。早速、実際に波形を観測したところ、試験表の値と違っています。これはいったい?」といった問い合わせを頂くことがあります。お話を詳しく聞いてみるとオシロスコープの設定や周辺環境(※1)の準備には問題がなかったのですが、1/100のプローブは買ったまま何もしていないということでした。

一般的に、プローブは使うオシロスコープと接続して一体で校正(調整)する必要があります。これは、「プローブが壊れていないのか?正しく観測できるのか?」を確認するために必要な作業となります(※2)。 とは言え、観測する波形がms以上(場合によってはμs以上)の動作や、単なるhigh/Lowのレベル確認程度であれば、無調整のプローブを使用しても問題無いケースが殆どです。
しかし"ns"~"μs"の立ち上がりや幅といった高速に変化する波形を、受動プローブを使って観測する場合、プローブの「正しい」調整が必須となります。

波形観測_図1-1 高速パルスの例

2. 原因のほとんどはプローブの調整不備

立ち上がり時間やパルス幅がnsオーダーの高速パルスを測定する場合、周波数帯域が広くサンプリング数の多いオシロスコープを用意する必要があります。観測対象となる機器の出力インピーダンスが50Ω系の同軸構造であれば、同軸型のアッテネータや同軸ケーブルを使う事でオシロスコープとパルス発生器を直接接続することが可能です(※3)。 この観測方法であれば、観測対象である波形をロスや遅延の少ない状態で観測することができます。

一般的にサージ発生器と呼ばれる機器の仕様は、国際規格や地域規格及びメーカー規格等で決められており、そのほとんどが同軸構造の50Ω系出力ではありません。端子形状が同軸構造の50Ω系ではありませんので、波形の観測には差動プローブや受動プローブを使用する事になるのですが、この差動プローブや受動プローブを使った観測方法では、試験器の校正データ(試験表のデータ)と同じ値が観測されない場合があります。「観測結果が異なる」とのお問い合わせ内容の殆どが、この"ns"~"μs"の立ち上がりや幅を持つ波形であり、調整の不備が原因で観測結果に差異が出たというケースが殆どです(※4)。

差動プローブを使った波形観測でのお問い合わせ例としては、

  • オシロもプローブも菊水の推奨品なのに、正しく波形が観測されない。
  • プローブを菊水で校正してもらったのに、観測結果が異なる。
  • 同じ周波数帯域のオシロに変えたのに、観測結果が全く違う結果となった。

等があります。

3. 身も蓋もない結論で恐縮ですが

前述のお問い合わせへの回答は次のようになります。

Q. オシロもプローブも菊水の推奨品なのに、正しく波形が観測されない。

A. オシロスコープとプローブを組み合わせて校正する必要があります。

Q. プローブを菊水で校正してもらったのに、観測結果が異なる。

A. プローブだけを校正しても使うオシロスコープで違いが出ます。(オシロと組み合わせで調整しないと観測結果は異なりますと、事前に伝えていると思います。)

Q. 同じ周波数帯域のオシロに変えたのに、観測結果が全く違う結果となった。

A. 周波数帯域やサンプリング数が一緒でも入力容量の違いによって観測結果が異なります(同型のオシロスコープで観測しても、入力容量の個体差があるため同じ結果にはなりません)。

オシロの使用方法は電気計測の基本で、ほとんどの方が初学段階に指導を受けていると思われます。ベテランエンジニアの方にとっては、商売道具を取り扱う上での基本で「常識」となる事項ですが、経験の浅い方、たまにしかオシロを使わない方にとっては、プローブの調整・校正は意外と見落とす(または思い違いしやすい)ポイントのようです。
ということで、正しい波形観測のためは、実際に使うオシロスコープとプローブを組み合わせて校正することが重要です、という身も蓋もないお話でした。

と終わってしまっては、つまらないので、次ページのような比較実験をおこなってみました。幸い当社には設備として高電圧パルス発生器や様々なモデルのオシロが社内に転がっています。これらを検証材料に、実際どれほどの差異が出るものなのか。結果がほぼ想像出来る検証ではありますが、実際にやってみる人はあまりいないだろう、と思われる稀有な実験です(笑)。話のタネになれば幸いです。

※1: 機種によってはオシロスコープを絶縁トランスで浮かせる必要があります。
※2: プローブ校正の見解につきましては、各メーカー様にお問い合わせ願います。
※3: オシロスコープを50Ωで終端する必要があります。 
※4: 菊水製試験器への問い合わせのケースに限ります。

本サイトの閲覧には会員登録(無料)が必要です。

会員登録はこちら

×