エンジニアコラム

高橋 典夫 高橋 典夫

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地味に難しい電池の突入電流波形模擬

2016.11.14

地味に難しい電池の突入電流波形模擬

職人技が支える「ラッシュカレント電源」

摺り合わせの妙技

まず、ラッシュカレント電源が実現しなければならない「突入電流波形」には標準形がありません(おおざっぱに「こんな感じ(下図参照)」というのはありますが)。顧客の製品と採用するバッテリの組み合わせの数だけ要求仕様があります。なので製作の際は、電流立上り、ピーク、下降時間、ラッシュ電流の電圧降下など仕様決めのポイントが多数あるため、実際のバッテリや試料を借用して合わせこみを行う必要があります。

実際、合わせこんでユーザにいざ電源を持ち込むと、製作(調整)時と波形が違うということは茶飯事で、顧客の実測用のケーブルを借用し再度調整するケースもあります。さらに自動化ラインに持ち込むと、そこには様々な治具があったりして、その接触抵抗で希望する波形にならず、現地でギリギリまで調整を行っている(汗)という苦労も多々あります。

ラッシュ電流波形 ラッシュ電流電圧波形

回路方式について

ラッシュカレント電源の回路方式として、かつては、シリーズドロッパ電源が大多数でしたが、最近は、コスト的に優位な大容量のスイッチング電源を使用する顧客もいます。

シリーズドロッパ電源の回路特性としては、電流制御になるため、一次側(平滑部)の電解コンデンサの容量を増やし、またパワートランジスタも電流に合わせて増やしておけば、二次側(出力)の電解コンデンサで立上り波形を作り、不足する電流分を一次側(平滑コンデンサ)からピークを抑えつつ補充するという、比較的無理のない動作が実現出来ます。

一方、スイッチング電源の場合は、電力制御のため、スイッチング自体の周波数が高くあっても、制御系としての応答が遅く、また(突入の)不足電流分を供給する手段がないため、出力の電解コンデンサにたまった電荷を放出したら電圧が落ちてしまいます。さらに二次側(出力)の電解コンデンサにたまった電荷は、一次側(電源側)の供給が遅いと出力制御に関係なく負荷のインピーダンスで電流ピークを流してしまいますので、ピーク電流値の大きい単発パルス電流になり、ピーク後のなだらかな立下り波形をつくることができません。

また、電流のピークや立下り波形を作るために、制限抵抗を挿入する等をしますが、最近は内部抵抗可変機能を採用することもあります。しかし内部抵抗可変機能が働くのは、ピーク値以降の制限領域からで、立下り部分での改善としての対応になります。スイッチング電源で理想的な波形を再現させるには、スイッチング電源に直列に電子負荷挿入して制御すると出来るのかもしれませんが、コストアップは、避けられません。それならば、シリーズドロッパ電源にした方が安上がりだと思われます。

絶滅危惧種?

ひとつ懸念点として、シリーズドロッパ電源は、ご存知のように需要が減っており、当社でも縮小傾向にあります。ラッシュカレント電源は、元々特注対応ではありますが、ベースとなる標準品(シリーズドロッパ電源)がないということは、一から作ることになり、それがそのままコストに跳ね返ることになります。またシリーズドロッパ電源を作る上で必要な素子(サイリスタやパワートランジスタ)も製造中止になるものが増え(代替品がない)、今後入手に難渋することが多くなりそうです。それも結果としてコストアップにつながります。 確かに、スイッチング電源は年々性能が向上し、価格的にも優位にありますが、すべての面においてシリーズドロッパ電源を凌駕するというわけではありません。応答性や低ノイズ性においては、いまだスイッチング電源より優れた特性を持った回路方式です。

今後も電池を使用する機器の評価には、こういった「ラッシュカレント電源」が必要であると思いますので、なんとか技術を絶やさず、次代に継承できればと思います。ということで、「ラッシュカレント電源」をご検討の際は、ぜひ、ぜひ当社にお声がけいただければ嬉しく思います(笑)。よろしくお願い申し上げます。

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